[東京 19日 ロイター] - 日本株の需給構造が変化してきた。これまでは海外勢が売れは下落、買えば上昇という構図だったが、足元の反発局面では海外勢が売り続けているにもかかわらず株価が上昇するという展開になっている。日本株を押し上げた主力は、日銀の上場投資信託(ETF)買いだ。需給的に底割れを防いだ形だが、ますます中銀頼みとなる市場に警戒感を抱く市場関係者も少なくない。
<株価反発局面で売る海外勢>
マーケットがリスク回避的になる際に海外勢が日本株を売るのは、過去よくみられた光景だ。しかし、今回これまでと違うのは、世界の株価が反発した後も海外勢が売り続けていることだ。
世界株とほぼ同時期のタイミングで日経平均株価.N225は反発し、3月19日の安値1万6358円を底に2万円台まで回復してきた。しかし、海外勢の売り越し基調は途切れることなく、その間、現物と先物の合計(8日まで、日本取引所のデータ)で約2兆6700億円の売り越しとなっている。
これまでの株価反発局面では、必ずと言っていいほど海外勢の買い戻しがみられた。例えば、昨年8月後半から12月末にかけて日経平均は2万0400円台から約3400円上昇したが、その間、海外勢は約5兆6500億円買い越した。
「世界の景気敏感株」と呼ばれる日本株は、良くも悪くも世界株と連動している。これまで世界株が下落すれば海外勢が日本株を売り、世界株が上昇すれば海外勢が日本株を買ってきた。しかし、今回は、世界株が反発する局面に入ったにもかかわらず、海外勢が日本株を売り越し続けている。
<期待低い日本の「新陳代謝」>
日本株に対する海外勢の売りが止まらない理由について、ピクテ投信投資顧問のシニア・フェロー、市川眞一氏は、コロナ後の日本で産業や企業の「新陳代謝」が起きそうにないと海外勢に見透かされているからではないかと指摘する。
市川氏は「日本は、これまでと同様に企業を守ることで雇用を守ろうとしている。コロナによって経済や産業の構造が変わろうとしている時に、全ての企業を守ろうとすると、結果的に新陳代謝が起きずに生産性が上昇しない」と懸念を示す。
日本が取る雇用重視の政策は、リーマン・ショックの最悪期でも失業率を主要7カ国(G7)で最も低い5.7%にとどめた。今回も、企業破綻が連鎖し金融システム不安につながることが最悪のシナリオであり、そのルートを断ち切ることが現在の政策のターゲットといえる。
しかし、経済の構造変化についていけないような企業を存続させてしまうと、雇用や資本の流動化が遅れ、結果的に経済のダイナミズムを損ないかねない。将来の雇用にも影響する。必要なのは再雇用制度の充実などであり、競争力を失った企業を生き延びさせることではない。
企業を守ることで雇用を維持させる政策は、低い生産性として今の日本に跳ね返ってきている。
第2次安倍政権発足当初に策定された「日本再興戦略2013」では、企業の開業率・廃業率を米英並みの10%へ引き上げると公約されていた。しかし、2018年度の開業率は4.4%、廃業率は3.5%(厚生労働省「雇用保険事業年報」)。安倍政権が重視した全要素生産性は、2018年までの6年間の年平均伸び率が0.5%(日本生産性本部のデータ)となっている。
>>2 へ続く
2020年5月19日 / 14:06
ロイター
https://jp.reuters.com/article/japanese-stock-market-forecast-idJPKBN22V0FY